漆産業に携わる人々

日本における漆産業の裾野はとても広く、それに携わっている人口も非常に多数です。
掻子(かきこ):漆の木に刃物で傷を付けて流れ出た樹液をヘラで集める職人の事

木地師(きじし):轆轤(ろくろ)を用いて椀や盆等の木工品を加工・製造する職人の事

下地師(したじし):彫金の素材となる彫下地を作る職人の事

塗師(ぬし):江戸時代以前では漆芸家の事。現在は漆を塗る職人の事

呂色師(ろいろし):上塗り後漆器の表面を鏡のような光沢がでるまで磨く職人の事

蒔絵師(まきえし):漆器の上に漆の樹液で絵や文様を描きその上から金や銀の粉を蒔いて装飾する職人の事

沈金師(ちんきんし):漆器の表面をノミで削りそこに金粉・金箔を貼り付けて装飾する職人の事

これらの職人の使用する道具を提供する人や販売に携わる人など、漆産業の人口は想像以上に多いと言えるでしょう。

漆器のいろいろ

一般に漆器と呼ばれるものの素材は、ヒノキやケヤキなどの高級木材を使用したものから樹脂製(プラスチック)の工業品まで様々です。
1.木製
漆器の素材としては最も一般的で、ケヤキ・ミズメ桜・栃・などが使われます。特にケヤキは木目も美しく、漆器の素材として最高級とされています。

2.木粉加工品

木の粉に樹脂を混ぜて型で固めたものです。天然木加工品や木乾と呼ばれることもあります。木製に比べ価格を抑えることができ、複雑な形に成形できるのが特徴です。

3.樹脂製

プラスチックやABSなどの樹脂を固めたものです。質感は木製や木粉加工品に比べかなり落ちます。

お椀
普段使いの汁椀や飯椀からお客様用の高級な煮物椀や吸物椀まで様々

鉢・皿
お菓子を載せる銘々皿・サラダボウルなど贈答品としても重宝される

お盆

食卓に品格を漂わせる漆塗りのお盆はおもてなしとしても最適

重箱・弁当箱

晴れやかな席に漆の艶や和の美しさで華やぎを添える


茶托・湯呑

様々な形があり人気が高い

箸・箸置き

木の優しい肌触りと柔らかい口当たりは独特のぬくもりがある

手鏡

古来より女性に人気の手鏡も漆塗りは別格の美しさ



漆器産業の現状

1980年初頭から伝統的工芸品の生産額が半減している中で、漆器産業も1991年の約1400億円をピークに2001年には約560億円にまで減少しています。バブル崩壊後の経済不況が最大の原因と思われますが、日本人の意識の変化というのも大きな要因になっているようです。

生活様式の変化

生活様式の欧米化の進展に伴う生活空間における漆器の使用頻度の減少や、核家族化によって生活用品が親から子や孫へうまく受け継がれなくなったと考えられます。また、昨今の大量消費社会の中で、「安価な商品を使い捨てる」という傾向が顕著となり「高価で使い捨て」しにくい漆器製品は敬遠されていくようになったようです。

大量生産による安価で良質な生活用品の台頭

生活用品が、品質・デザイン・販売方法の改良により大量かつ安価に供給されるようになると、製作に長い時間と多くの工程を要する漆器製品は消費者に好まれなくなってきてしまったようです。また、アジア諸国からの安価な類似品や代替品の輸入が増えてきたのも漆器の需要減少の大きな原因となっています。

ニーズに適応した商品開発の遅れ

消費者の新たなニーズに適合した商品の開発が、漆器産業の性格上遅れがちであったことも否定できません。伝統的な技術・技法に依存する漆器産業の最大のネックと言えるでしょう。また流通面においても、デパートや専門店での伝統的工芸品の取扱い数の減少を背景に、インターネットの普及と共に低コストかつ迅速な流通システムが確立された今日ではそれを効率的に活用しきれていない漆器産業にとっては大きな打撃となっていきました。

その他の要因知

名度の不足や情報提供の不足も消費者が漆器製品から離れていく大きな原因のひとつと言えるでしょう。こうした需要低迷を背景に経営難と後継者確保難が相まって需要低迷に拍車をかけることとなります。更には自然環境の変化や都市開発の進展により原材料の採取・調達が著しく困難となり、漆器の製作に不可欠な用具についても原材料や人材の確保が困難となり円滑な供給ができなくなってきています。

今後の展望

最近は国民のニーズが大量生産・大量消費から多品種・少量消費へと変化し始め、生活にゆとりと潤いを求める動きが現れる中で生活用品においても質の高い製品に再び注目が集まり始めています。地域独自の文化を見直そうとする風潮や、古来日本人が編み出し受け継がれてきた「和」の暮らしの知恵が見直されつつあります。「ものづくり」に対する歴史的基盤としての再評価や「職人」に対する良いイメージが高まりつつあるようです。欧米においても和風の生活様式に対する関心は高まる一方で、自然との共生とその特質とする伝統的工芸品は、これからの循環型経済社会の実現に於いて重要な役割を果たすことになるのではないでしょうか。